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岡 佐和香/舞踏家

初めて彼女が踊っているのを見た時、その威風堂々たる姿に圧倒されてしまった。美しくもアンダーグランドさを持ち合わせた不思議な雰囲気に圧倒されたのかもしれない。今回はそんな魅力をもった岡さんにお話をお伺いした。

――岡さんの活動の始まりはどのようなことだったのですか?
oka01岡:舞台に立ったり関わるようになったのは大人になってからなんです。学生時代、クラブイベントなどで振付を頼まれたりしていました。卒業を控えたころに自己分析をしたところ、私はダンスがしたいんだってはっきりわかったんです。子供のころにバレエを習っていたことが土台としてはあると思うんですけれど。

――子供のころのバレエが土台となって舞踏へと?

岡:やっていたとはいえブランクがあったわけですから、そこから始められるものを探していたんです。その時テレビで大野一雄という人が踊っているのを観てすごく感動したんです。当時90歳を過ぎていたんですけどそれはもう素晴らしくて、それを観て私も踊りたいと思いました。それが舞踏だったんです。彼は舞踏の世界では圧倒的な存在の人で、その後師事することになりました。

以前、私の振付を見た人からは「あなたの振付は舞踏に似ている」と言われたことがありましたが、その時は舞踏というものを知りませんでした。でも生理的には自分に近いんだろうなって思っていました。

23歳くらいから肉体訓練を始めました。脚も上がらないゼロからのスタートでしたね。最初の1年は毎日ずっと踊りのレッスンをしていました。昼は自分で、夜は師匠の研究所に行ってひたすら舞踏のレッスンを受ける生活でした。

――舞踏というのはどんなものなのでしょうか?

岡:そうですね。「形」ではなく「自分」を表現するというものなんです。ダンスというと身体の柔らかさや腕や脚の上がり方を美しく見せるものと思われるんですけど、舞踏は真逆といえるかもしれません。脚があがらなくても、曲がっていてもいいから、とにかく自分と深く向き合って真実を表現するものなんです。恥ずかしい、赤裸々な自分をさらけ出す。自分だけでなく、風や、出来事に突き動かされるようなものです。

――そういう精神的なところに魅力があるのですね?

岡:ええ。世の中には心や感情を出さなくてもテクニカルに格好よく、または無機質に踊れるスタイルのものもありますけれど、私は身体を動かして肉体の内面から出てくるエネルギーをどうしたらいいか、というところにこだわっています。

――岡さんの表現に触れて圧倒されたんです

oka02岡:ありがとうございます。人って良いところと悪いところ、美しいところや醜いところの両方を持っていますよね。でもそれをさらけだせる機会ってなかなかないんです。私はそういうものを踊りで表現することによって、観てくださる方の中にもあるそうしたところと共感して、調律していくようなことがしたいんです。普段生活している中でどれだけ幸せに生きているかっていうことを感じていただけたら良いですね。普通のエンターテインメントって、ポジティブなところは出すけれど、ネガティブなところって出さない傾向にありますね。それは不自然だと思うんです。

――ということは普段の岡さんはそういうところを出すのでしょうか?

岡:いいえ、出さないです。でも舞台では出してしまうんですよね。そうしないと病気になってしまう。そんな私を見て皆さんが自分自身と向き合って調和して生きていこうとしていただけるのではないかと思うんです。

私もそうでしたが、例えば思春期のときって自分のことがうまく整理できない、言葉にならない、そんな闇の中にいる時もありますよね。そこに寄り添ってもらえると自分で調和を取り戻していけるんですよね。私はそういうことを大切に思っていますし、そのために五感を大切にしています。

「便利さよりも五感を大切にする生活」

――例えばどういうところでしょうか?

岡:以前、専門学校の学生さん100人に特別講義をしたんです。始めはガヤガヤうるさくてバラバラだったんですけど、やがて一生懸命踊るようになって一糸乱れず踊ったんです。そのあと、体の細胞を修復するといわれているCDや528HZのクリスタルボウル、そして香りを使ってリラックスしてもらったところ、踊った後にも関わらずたった5分で100人が一斉に眠ってしまったんです。

グローバリゼーションなどと言われて自分をアピールしなくちゃいけないと時代ですけれど、今の子たちは疲れているのかなって思いました。日本人はゆったりした中で好きなように生きていくっていうことを望んでいるでは?と。テクノロジーが進んでいる中でも自分のリズムを大事にできることの方が大切だと思うようになった良い体験です。

――岡さんがリラックスするのにしていることはどんなことでしょうか?

岡:以前、踊りを始めたときに“間が悪い”とよく言われたんです。呼吸の問題と言われて座禅や瞑想などいろいろ試した結果、普段のリラックスした体が大切と分かりました。深く吸って吐いて、という呼吸。それから香りと食べ物ですね。香りや食べ物は10年前の生活水準と明らかに違ってしまっていると感じます。香りは合成のものや化学物質が蔓延して臭覚が鈍感になっていると感じます。臭いものを感知して逃げるために臭覚があるのに麻痺して気づかない。その感覚で24時間生きていたら病気になってしまうと思うんです。味覚もそうですね。ごはんを食べておいしいときには「おいしい!」と感動することって五感を研ぎ澄ますうえでは大切だと思うんです。そういう感覚がないと悲しいし、切ないですね。なのでオーガニックの食べ物を摂ったり香りを感じたり、深い呼吸をすることでコントロールするようにしています。みなさんにもそういうことをプレゼントしたいと思っています。

――オーガニックが良いということでしょうか?

oka03岡:なにがなんでもオーガニックを、いうことではないんです。堅苦しく考えたら続かないですし、人それぞれでいいと思っています。同じものを食べても病気になる人とならない人がいるわけですから、個人差がありますよね。不摂生でもなんでも元気な人はそれでいいと思うんです。私は体が丈夫じゃないので自分の体に聞いてベストなスタイルを築くことが大切だったんです。

――体に効いたものとは?

岡:例えば玄米、無農薬、水、鉱物(ミネラル)などですね。自分で確かめて良いものは取り入れますし、成果のないものはやめてしまいますね。結果的に、これは良いという感覚になったものを続けているんです。野菜は通販で無農薬を取り寄せています。大真面目に「無農薬」に取り組んでいるというより、通販なら買い物に行く手間が省ける、せっかく通販なら無農薬がいいかな、という感じです。その結果おいしい、体が喜んでいるから続けよう、となるわけです。そうして気づいたら健康オタクな生活をしていますが、すべては自分の感覚を大事にしているところからなんです。

「お金をかけずに生活を豊かにすることを楽しむ」

――感覚を大事にするというのは踊りにも共通することですね?

岡:とにかく何かを創っているのが好きなんです。踊りや創作も好きですけれど、創作料理も大好きです。24時間、生活自体も創作していることが好きなんです。

例えば去年ハマったのは乳酸菌なんです。玄米のとぎ汁に黒糖と塩を入れると乳酸菌ができるんですけど、それをお風呂に入れて体があったまるんですよ。とにかくお金をかけずにどれだけ自分の生活を豊かにするかを楽しんでいますね。

最近ではピーナツバターです。大好物なんですが買うと高いから作ったら安くて毎日食べられる!という発想です(笑)ピーナツを買って、ミキサーを買って作って。自分でひと手間かけて作ることが楽しいですね。そうやって気が付いたらナチュラルな生活になっています。

おいしいもの、本当に良いものを創れば身体は元気になるし踊りもよくなると思っています。

 

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<プロフィール>
岡 佐和香(おか さわか)
舞踏家。長野県生まれ神奈川育ち。1997年舞踏に出会い、大野一雄らの指導の下、自己の内側から沸き起こるエネルギーを表現。芝居、生け花、剣舞など様々なスタイルを融合させて独自の世界観を持つ唯一無二のダンスを踊る。その活動は劇場の枠を超え、多くの人や自然、場と交感、交歓するためにクラブ・野外イベントや映像作品などへと広がっている。近年は体と向き合う、自然と向き合うワークショップを展開し、多くの人の五感を刺激する活動に意欲を注いでいる。

取材・編集/ 熊倉康裕
ライティング/酒井ゆき
撮影/ 甲斐 琴美